デジタルものづくり教育研究センター(併任)の辻敏夫 特任教授が 令和7年度 文部科学省 科学技術賞(研究部門)を受賞しました。受賞内容は以下のとおりです・
◆科学技術賞 研究部門
【受賞者】辻 敏夫(広島大学大学院先進理工系科学研究科 特任教授)
※広島大学デジタルものづくり教育研究センター 特任教授併任)
【業績名】筋力学特性と機械学習機能を有する生体模倣型筋電義手の研究
※福田 修(佐賀大学教育研究院自然科学域理工学系 教授)とのグループ受賞
【業績概要】
上肢切断者の日常生活を支援するため、事故や病気で失われた人腕の運動機能を再現可能な筋電義手が求められている。しかしながら、従来技術では人腕のような滑らかでしなやかな運動を再現することは困難で、手指の多動作の識別制御も限界に達していた。また、コストの高さやメンテナンスの難しさも普及の大きな妨げとなっていた。
本研究では、人腕が有する筋力学特性を世界で初めて筋電義手の制御に導入し、しなやかで精密な運動制御を実現した。また、独自の機械学習機能により、高精度な運動意図推定を可能にした。さらに、3Dプリンタを用いた5指駆動型の筋電義手と筋シナジー理論に基づく制御法を新たに開発し、自然な手指の動きの再現に成功した。
本研究により、人腕の動作に匹敵する筋電義手の開発が進み、これまでは困難であった手指の生体模倣制御が可能となった。また、3Dプリンタの活用により、コストの削減やメンテナンス性の向上が図れ、実用化への道が大きく開かれた。
本成果は、上肢切断者の生活の質を向上させ、社会参加を促す一助となる可能性がある。また、日本発の革新的な筋電義手技術として国際福祉に寄与することが期待される。
【デジタルものづくり教育研究センターとの関わり】
辻特任教授の研究業績は,デジタルものづくり教育研究センターにおける空調システム開発プロジェクトの研究に応用されています。筋電義手用に開発した骨格筋モデルを、末梢動脈の血管平滑筋に応用した「末梢血管剛性」を展開し、快適性・温冷感を測定することで,人が感じる快適さを実証的に解明し,空調機器における省エネと快適さの両立を目指した研究を進めています。
